商品先物取引被害について

(1)商品先物取引とは、たとえば「金」では、証拠金を15万円払うだけで「金」1キログラムを500万円で買うことができるが、1枚につき手数料2万円を払う、などというものです。そんな取引で、数万円の利益が出たといっては決済し、また、数万円の損が出たといっては両建にするなどしてまた決済する、といったことを繰り返していては1回に払う手数料が2万円と非常に高いのですから、そんな取引を続けていて、利益になる筈がありません。

 そのうち、大きな相場変動が逆目に出て大損し、その後は追加資金を次々と出さされて、客はまさ地獄に引きずり込まれます。商品先物取引の最大の問題点は、そのような時に損を少しでも取り戻そうとする客が頼れるのは先物業者の担当者(外務員)だけだ、ということです。

 おぼれかかっている時に、仕方なく、担当者にすがりつくしかない。担当者は客が自分に頼るしかないことにつけ込んで、さらに次々と資金を出させて、取引を拡大させて損を拡大させます。それはまるでおぼれないように、岸にたどりつきたい客を、逆に、沖へ沖へと、さらに深みへと、引きずり込んでいるものです。

 投資金も尽きかけて、もはや損切りしてやめるしかないことは明らかなのに、担当者は決して、もうやめましょうとは言いません。どんな時でも、「ここでやめると、これまでの資金が全部、無駄になりますよ」などと言って取引を続けさせます。結局、手を付けてはいけないお金にまで手を付けるような状態になるまで、客は、損を、莫大な損をさせられるのです。

 そんな取引が、違法で無い筈はありません。業者は、そのような構造になると知りつつ、そのような構造で次々と取引をさせなければ手数料収益を上げられないことから、わざと、客が大損し、破綻するような取引もいとわず、手数料を稼ぐのです。ぜひ、裁判で業者の違法性を追及して下さい。

(2)裁判では、多くの違法勧誘、不当な取引が認定され、業者に損害賠償を命じる判決が下っています。実例は、当事務所が担当した判決などを参照して下さい。

 たとえば、両建取引は、そもそも不当で、両建を勧誘すること自体、法律や省令で禁止されています。両建は、一度決済してまた後日建てるのと同じ損益、同じ手数料にしかならないということが国民生活センターのブックレットにも明記されています。少なくとも、見通しがつかない時に両建でしのぎ、見通しがついた時点で外すのが両建というものでしょう。それなのに、見通しもつかないうちに両建を外すから、すぐにまた両建に戻す、また、見通しもつかないのに両建を外す、また両建に戻す、ということを繰り返すことで、業者の手数料稼ぎが可能になります。

 ほかに、利益を確定させると称して「買い直す」(売り直す)、「買い」を仕切ったその日のうちに「売り」を建てるドテン、建てたその日のうちに仕切る「日ばかり」など、「特定売買」の手法を駆使して業者は顧客の利益を無視して手数料を稼ぎます。

 本来、たとえば、「夏までに大きく上がる」などということで値上がりを予想し、「買い」を建てたはずで、数日中に、売ったり、買ったり、、両建にしたり外したり、また元に戻したりということを繰り返すことは全くおかしいのです。

 その結果、取引は必然的に頻繁になりますが、月間の取引が往復4回以上とか、長期のうちに損金のうちに占める手数料の割合が30%を越える、などというのは手数料稼ぎの不法行為である、などという判例があります。

 両建や買い直しなどが何度も行われて、月に何度も取引が行われているということは、顧客の利益を計った取引が行われていない何よりの証拠であって、一定以上の手数料化率となっている取引は、顧客が特別に自ら望んでそのような取引を行ったという場合でない限り、違法です(手数料ばかりかかって、利益が出る可能性の小さいそのような取引を、顧客がそれと判って自ら希望するはずはありません)。

(3)こんな違法な勧誘がまかり通っていいはずがありません。ぜひ、弁護士にご相談ください。(商品先物取引と類似の取引で、CFD取引(差金決済取引)という、業者との相対取引や、くりっく株365という、商品指数や日経平均株価などをもとに投機取引を市場で行う取引でも同様の被害があります。)